感覚(かんかく)

  1. (名詞)

    外界からの刺激を感じる働きと、それによって起こる意識。

    主な刺激の種類として、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚や、温覚(おんかく)・冷覚(れいかく)・痛覚(つうかく)などが挙げられる。

  2. (名詞)

    生体内外のさまざまな刺激が感覚器官を介して中枢に伝えられたとき直接に生じる意識現象。

    リンゴに対し、赤い、冷たい、なめらかといったさまざまな性質が感じられるが、これが感覚であり、それに対して、赤いリンゴというように対象を統一的・全体的にとらえることは知覚作用だとされる。

    しかし感覚と知覚の関係については様々な議論があり、感覚は理論上想定された抽象物にすぎず、意味をもった知覚こそが、経験の基礎となるというのが現代哲学の大勢である。

    感覚は受容器(感覚細胞)や刺激の種類によって分類され、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、皮膚感覚(触覚、痛覚、温覚、冷覚)からなる外感覚と、生体内部からの刺激源に起因する深部感覚、内臓感覚、平衡感覚などの内感覚とがある。
    内感覚は外感覚と違って感覚の種類の区別や局在が不明確な場合が多い。

    また,一般に視・聴・嗅・味・触覚を五感と呼ぶ。

    すべての感覚は刺激がある一定の大きさをもたないと起こらず、感覚を起こす最小の刺激の大きさを閾(いき)という。

    受容器から出る感覚神経は大脳皮質の感覚野に到達、多くのものは身体の左半分の受容器からくるものは右半球の大脳皮質へ達するという反対側支配である。

    皮膚感覚と深部感覚に関する体性感覚野と、味覚野、視覚野、聴覚野に囲まれた領域は連合野と呼ばれ、さまざまな感覚、過去の経験をもとにして知覚を営む場所とされ、ヒトの新皮質ではよく発達している。

  3. (Wikipedia)

    〔定義と歴史について〕

    ギリシャ哲学者である、アリストテレス(前384年 - 前322)は霊魂論でヒトの感覚を初めて分類し、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の5つがあるとした。
    これが広く知られる五感であるが、現在は実際にはそれ以上の数の感覚があることがわかっている。

    ただし、現代の生理学では感知される情報の内容、感知機序、伝達様式などによって多様に分類されており、その分類自体も確定してはいない。
    かゆみをはじめとする未だに仕組みが詳細には解明されていない感覚も多く残されている。

    いわゆる第六感は、五感にあてはまらない超越した感覚という意味だが、これは勘や直観といった心理的な動きを感覚で比喩したものであり、通常は感覚に含めない。

    〔刺激の受容と感覚〕

    感覚は、動物が外部からの刺激を受けることで生じるものである。
    この時、刺激を受け取る器官を受容器といい、これは往々にして感覚器官とも言われる。

    動物は様々な感覚器官を持ち、それぞれがある範囲の種類の、ある範囲の強さの刺激だけを受け取ることができる。

    たとえば、ヒトの眼は、短波長側が360 nm - 400 nm、長波長側が760 nm - 830 nmの電磁波(可視光線)だけを受け取ることができる。
    受容器で受け取ることが可能な最適な刺激を適刺激(adequate stimulus)、又は自然刺激(natural stimulus)といい、さらに受け取れる強さの幅を閾値(しきいち)という。

    それぞれの受容器はこのように限られた刺激しか受け取れないので、動物は多数の種類の受容器を持ち、それらは1〜2個しかないものもあれば、全身に無数に持つものもある。

    〔ヒトの感覚分類について〕

    現在までに知られている主な感覚:下線はいわゆる五感を示している。

      〔体性感覚〕

      皮膚感覚と深部感覚の2種類に分けられる。

        <皮膚感覚>
      • 触覚(手で触る:ものを「触った」際に生じる感覚。)
      • 温覚(暖かさ)
      • 冷覚(冷たさ)
      • 痛覚(痛さ)
      • 食感
      • くすぐったさ
        <深部感覚>
      • 運動覚(関節の角度など)
      • 圧覚(押さえられた感じ)
      • 深部痛
      • 振動覚


      〔内臓感覚〕

      内臓に分布した神経で、内臓の状態(動き、炎症の有無など)を神経活動の情報として感知し、脳で処理する仕組み。

      • 臓器感覚(吐き気など)
      • 内臓痛
      〔特殊感覚〕

      • 視覚(目で見る:光を網膜の細胞で神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。)
      • 聴覚(耳で聞く:音波を内耳の有毛細胞で神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。)
      • 味覚(舌で味わう:食べ物に含まれる化学物質(水溶性物質)の情報を、舌、咽頭、喉頭蓋などの味覚細胞で神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。)
      • 嗅覚(鼻で嗅ぐ:鼻腔の奥にある嗅細胞(きゅうさいぼう)で、空気中の化学物質情報を神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。)
      • 平衡感覚(内耳の前庭や半規管などで、頭部の傾き、動き(加速度)などを神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。)
      〔その他の感覚〕

      • 固有・運動感覚

        体に対する意識(筋、腱内の受容器による筋、腱、間接部の緊張の変化)の知覚である。

        ヒトが大きく依存する感覚であり、しかしながら頻繁に意識されない感覚である。

        説明するより更に簡潔に明示すると、固有感覚とは、体の様々な部位の位置する場所を感じているという「無意識」である。

      • 什痒感(そうようかん)

        いわゆる「痒み」の感覚。
        長い間「痒みは“痛み”の軽いもの」と思われていたが、独立した感覚である可能性が示されている。

    〔ヒトにはない感覚〕

    <ヒトの感覚に類似するもの>

    他の生物も上記で挙げたような周りの世界を感じとる受容体を持つが、そのメカニズムと能力は幅広い。
    視覚

    ・トンボなどの複眼は視細胞の集まり方がヒトの水晶体眼と違うが、どちらもレンズ的な要素を獲得した意味では類似しており、収斂進化の一つと言える。

    ・ヒトの視覚と仕組みは異なるが、ミツバチは紫外線(ヒトの目には見えない波長の短い光)を見ることができ、マムシやボアは赤外線(ヒトの目には見えない波長の長い光)を見ることができる。

    ・ネコなどの夜行性動物は、網膜の後ろに「タペタム」と呼ばれるヒトにはない反射膜を持ち、光を反射して増幅することでヒトよりも暗闇でよくモノを見ることができる。

    聴覚

    ・コウモリやクジラは、超音波(ヒトの耳には聞こえない高い周波数の音)を発し、反響定位(動物が音や超音波を発し、その反響によって物体の距離・方向・大きさなどを知ること)を利用して、自分や獲物の位置を知ることができる。

    嗅覚

    ・イヌやクマの嗅覚の仕組みはヒトと同様であるが、ヒトよりはるかに鋭い嗅覚を持つ。例えば、イヌの嗅覚はヒトの数千から数万倍とされるが、その能力は有香物質の種類によっても大きく異なり、酢酸の匂いなどはヒトの1億倍まで感知できる。昆虫は嗅覚受容体をその触角に持つ。

    フェロモン受容器

    ・トカゲやヘビ、多くの哺乳類は、嗅覚とは別に「ヤコブソン器官」と呼ばれるフェロモンを受容する専用器官を持つ。ヒトにも発生初期には存在するが、胎児期に退化してしまうため機能していない。

    <ヒトの感覚に類似しないもの>

    反響定位(エコーロケーション)

    コウモリやクジラなどは、自分が発した音の反射音によって周囲のものと自分との距離や位置関係を知ることができる。音にはまっすぐ進み反射しやすい特徴をもつ超音波が用いられる。クジラは「メロン体」と呼ばれる器官で反響定位で使用される音の焦点を合わせていると考えられている。洞窟や深海のような暗黒の世界では視覚が役に立たないため、代わりに反響定位が視覚に近い役割を担う。 ヒトの感覚に類似しないにも拘らず、一部のヒト個体はこの感覚を持つ

    電気感覚

    サメ、エイ、ナマズなど一部の水生動物は電場を感知する器官を持つ。サメには「ロレンチーニ器官」と呼ばれる微弱な電場を感知する器官があり、これにより光の届かない深海や海底の泥に隠れている獲物を発見し捕えることができる。サメのように他の動物がつくった電場を感知するタイプと、デンキウナギのように自ら発電して体の周囲に電場を作りレーダーのように電場内の異物を検知することで周囲を知るタイプがある。なお、ヒトの感電は電気の受容ではない。

    磁気感覚

    帰巣本能を持つ伝書鳩や渡り鳥など一部の鳥は、特定の方向に向かって正確に遠距離を移動する能力を持つが、これは地磁気と呼ばれる地球の磁場を感知することで位置や方角を知ることができるからだと考えられている。ただし、感知の仕組みについては諸説あり、解明されているわけではない。


    赤外線受容器

    マムシやボアなど一部のヘビは「ピット器官」と呼ばれる赤外線を熱線として感知する器官を持つ。ヘビの獲物である小動物は、自身の体熱により赤外線を出しているが、左右にあるピット器官で赤外線の発生源までの距離や位置を知ることができる。これによりヘビは夜間でも獲物を発見し捕えることができる。