価値(かち)

  1. (名詞)

    その事物がどのくらい役に立つかの度合い。値打ち。

  2. (Wikipedia)

    あるものを他のものよりも上位に位置づける理由となる性質、人間の肉体的、精神的欲求を満たす性質、あるいは真・善・美・愛あるいは仁など人間社会の存続にとってプラスの普遍性をもつと考えられる概念の総称。

    殆どの場合、物事の持つ、目的の実現に役に立つ性質、もしくは重要な性質や程度を指す。

    何に価値があり、何には価値がない、とするひとりひとりのうちにある判断の体系を価値観と言う。

  3. (日本大百科全書)

    われわれが生活していくうえでの必要や欲望を満たし、われわれに満足を与えるものは、いずれも価値あるものとされるが、その代表は商品であり、その場合の価値は経済的価値である。

    だが、こうした経済的価値とは別に、さまざまな価値がある。

    商品ではなくても、ある人にとって快適なものは、その人にとって快適価値をもつし、健康といったものも生命にとって価値あるものであり、生命価値を備えている。
    さらには、人間の精神的活動に満足を与えるものとして、

    1. 論理的価値(真)
    2. 道徳的価値(善)
    3. 美的価値(美)
    4. 宗教的価値(聖)

     精神的価値の場合にとくに明らかであるが、価値はそれ自体としては、さまざまな事物のように、人間を離れて実在しているわけではない。

    価値は、価値を感得する人間の存在をまって初めて存在する。

    またある人にとって価値あるものでも、他の人にとってそうではない場合もある。

    とはいえ、各人が何に価値をみいだすかに関して相違があるにしても、真善美といった価値そのものは、各人がそれを認めると認めないとにかかわらず、客観的に存立するとみることができ、そこから新カント学派のリッケルトは、価値の客観性を「妥当性」Gültigkeitという語で表現し、妥当する価値を中心とする価値哲学を樹立した。  また、現象学派に属し実質的価値倫理学を展開したシェラーは、さまざまな価値の間に高低の序列があるとし、
    1. 永続的な価値ほど高い
    2. 分割できない価値ほど高い
    3. ほかの価値によって基礎づけられない価値ほど高い
    4. 感得する際に与えられる満足の深い価値ほど高い
    5. 人間の感性面に局限されない価値ほど高い
    という序列決定の基準を示した。

    つまり快適価値よりも生命価値が、生命価値よりも精神的価値が高く、精神的価値のうちでは宗教的価値が最高であるとした。

     なお、カントによると、人間の欲求を満たすものは市場価格をもち、趣味を満足させるものは感情価格をもつが、これらはいずれも外的で相対的な価値であり、等価物の存在を許すが、これに反して、道徳的でありうる限りでの各人の人間性は、何にも置き換えられない内的にして絶対的な価値をもつ。

    この価値が「尊厳」Würdeであって、人格の尊厳を強調するカントは、道徳的価値を最高の価値とみていることになる。